2.それは愚かな惰性

「あぁーっ!!さっきも言ったばかりだろ!?」


声を荒げて時任が叫んだ。と同時に、俺の手中にあったものを取り上げる。


「それ、さっき火付けたばかりなのに」
「知るか!」


そう言って、まだだいぶ長さのある吸い殻を吸い皿に押し付ける。
最後にジュッて音を立てて、赤い光が消えた。


「久保ちゃん」
「んー?」
「今の、何本目だった」
「あー……13、くらい?」
「10本までって言っただろーが!!」


うん、まあ、確かに言われたね。今日から1日10本まで、って。
でもね、あれって一方的だったよね?俺はいいなんて言った覚えはないんだけど。


「久保ちゃん」
「うん」
「あのな。俺は別に嫌がらせをしてるわけじゃないぞ。お前のことを思って言ってやってんだからな」


うん。一応それは理解してるよ。


「このままほっとくと久保ちゃん死んじまうんだぞ!?」


んな大袈裟な。
そんな柔な身体してないよ、俺は。


「時任。とりあえず座って?」
「ヤダ」


即答しないでよ。


「久保ちゃんが約束するまで座らねえ」


どこの駄々っ子ですか。


「わかった。約束する」
「…………ホントか?」


そんな疑わしげな瞳で見ないでくれるかな。そんなに俺って信用ない?


「大丈夫。ちゃんと煙草は1日15本まで、って約束するって」
「増えてる増えてるっ!!」


あら、気付かれちゃった。
ホントこういうことにはしっかりしてるのね。


「……マジでさ、なんとかならねぇの?」


突然、時任の声色が真面目なものになった。見上げてみると、表情も真剣。
俺の思っていた以上に、コイツは俺のことを心配してくれていたようだ。


「……あのさ」


俺が呟くと、時任が眉を顰めながら顔を窺ってきた。


「独りにしないから」
「……え……?」
「もう習慣になっちゃってるからさ、今更だけど。でもね、お前を置いて逝ったりなんてしない」


瞳を真っ直ぐ見つめる。


「安心していいよ」


すると、見る見る顔を赤に染める時任。
わあ……面白いくらいに真っ赤だわ。


「な……ばっ、お前……っ」


まともに言葉を発することが出来ないみたいで、口をパクパクとさせるばかり。
そんな時任の腕を掴んで引き寄せる。すると、簡単に時任は俺の腕の中に収まった。


「……久保ちゃん……」


時任が見上げてくる。


「ねえ時任」
「………んだよ」
「もう少し、付き合ってね?」


お前が言う、愚かな惰性ってヤツに。


「……とことん付き合ってやらぁ」


up 08.02.25