「……煙い」
今日の第一声はそれだった。
窓を開けてあるにもかかわらず、部屋に充満する白い煙。
朝っぱらからこんなとこで吸うなっての。
ベッドから降りると、寝癖のついた髪を撫でながら犯人がいるであろうリビングに向かう。
……駄目だ。後ろ髪がちょい跳ねてら。
「……はよ」
「あら、やっと起きた」
新聞から顔を上げて、久保ちゃんが笑いながら、おはようって返した。
あぁ、またコイツ吸ってやがるし。
「時任、髪跳ねてる」
「……知ってる」
でも直んねぇんだよ。
ソファに座る久保ちゃんの隣りに俺も腰を下ろす。
「なぁに?」
俺がジッと見ているのに気が付いた久保ちゃんが首を傾げた。
「あのさぁ」
「うん」
「美味いか?」
「コレ?」
コレ、と言って指先に摘んだのは、今まで久保ちゃんが咥えてた煙草。
俺が頷くと、目を細めながら久保ちゃんは、うーんって唸った。
「どうだろ?」
「どうだろ、って……」
わかんねぇのかよ。毎日吸ってんじゃん。
「お前も吸ってみる?」
「止めとく」
なんか不味そうじゃんか。すっげ苦そうだし。
「なあ、久保ちゃん」
「ん?」
「わかんねぇならさ、煙草止めれば?」
「えー……」
「だってよ、煙草って寿命縮まんだろ?」
肺も真っ黒になるって、この前テレビでやってたぞ。
「うーん……でも美味いし」
「どっちだよ」
「ま、あのさ」
煙草を咥え直すと、久保ちゃんはなんだか楽しそうに笑った。
「そういう人生もありっしょ」
「……そうかぁ?」
「うん」
煙草吸ってて、それが原因で死ぬってなんか間抜けな感じしねぇか?
本人にとっちゃあ、自分の好きなことして死ぬんだから、別に構わない奴もいるんだろうけど。
「……なあ、久保ちゃん」
でもさ。
「少しは控えろよ?」
「……ん。わかった」
俺は構うんだよ。
up 08.01.31