雨止まないなぁ。
今日は朝から土砂降りで、さっきやっと治まってきたところだ。それでも雨が窓を叩き付けている。
「久保ちゃん」
窓の外から視線を外して隣りを見る。いつの間にかそこには時任がちょこんと立っていた。
「終わった?」
「ん」
頷くと腕を突き出してきた。そこには膨れたビニール袋。
持てって?
ま、別に不満はないけどね。いつもだって俺が持ってるわけだし。
傘立てに立て掛けておいた傘を時任から受け取って、もう一度店の外を見る。
「……間違いなく濡れるよな」
どうやら同じことを考えていたみたい。時任は恨みがましそうに雲に覆われた空を睨み付けていた。
既にこのコンビニに来るまでに二人共びしょ濡れだけど、これ以上は濡れたくないかな。
ほら、せっかく買った近麻も濡れちゃうしね。
「……よっし」
何か隣りから気合いの籠った声が聞こえてきた。
何事かと思って視線を向ければ、そこには身体の前で両の拳を握り締めている時任がいた。
……何気合い入れちゃってるの、お前。
次に、時任はパーカーのフードを被りだした。
「久保ちゃん」
時任が目で訴えてくる。
その思想が容易に読み取れて、俺は思わず諦めの溜息を吐いた。
「なあ久保ちゃん」
「うん、なぁに?」
「走るぞ」
ああ、やっぱり?
わかってはいたけど、聞きたくなかったかな。でも、何を言っても聞かないだろうから。
俺もビニール袋の口を固く結んで、腕に抱き抱えて走り出す為の準備をする。
中身が濡れないようにしなきゃ。あの黄色い箱が濡れると怒りそうな奴がいるからね。
「おっし行くぜ!」
「どこがゴール?」
「もち部屋!遅かった方が今日の晩飯当番な!!」
わお、それは大変。頑張らないと。
「行くぞ……」
二人して構える。大の男がコンビニの入口で何をやってるんだって感じだよね。
でもこの天気のお蔭で客が少ない。っていうか、俺達以外にいたっけ?
まあとにかく。レジにいるあのお姉さんの目には、俺達が異様に映っているのは確実だと思うよ。
「よーい……」
空が光った。
幾本もの細い線が素早く空を走る。それから少し間を空けて轟く雷鳴。
その瞬間、俺達は同時に駆け出していた。
「冷てぇっ!!!」
空からの滝に飛び込んでから時任はそればかり。
次から次へと文句が口を衝いて出てきている。ホント感心するほどに。
自分から言い出したのにねぇ。
「寒ぃ!!!」
風邪引かないでよ?
お前って風邪引くとおとなしくなっちゃって、ちょっと不気味なんだよね。……あ、けなしてないからね。
俺より少し前でフードを押えながら走る背中に笑みを浮かべる。
今回は負けてあげてもいいかな。わざと負けると怒るけどね。
今回の敗者は晩飯当番。
でも、まだあの料理の残りがあるから。
「久保ちゃんっ!!」
走りながら時任が顔だけ後ろに向けて話し掛けてくる。どっちかって言うと叫ぶに近い。
危ないから転ばないでよ。
「今日はカレーはなしだかんなっ!!」
あれ、そうなの?
up 08.04.13