ghianda

「いてっ」
「お?どうした獄寺」


隣を歩いていた筈の姿が視界から消える。
足を止めて振り返ると、獄寺は立ち止まり頭を抑えて宙を見上げていた。


「……なんか降ってきた」
「降ってきた?……あ、これじゃね?」


その正体を見極めようと、オレは地面を探る。
オレ達の足元に、まだ青々とした色のどんぐりが、傷一つない状態で転がっていた。


「どんぐり?」
「おう。こいつが頭に当たったんだろ」
「……まだガキのくせに生意気な」


獄寺がしゃがみ込んで、その緑色のどんぐりを睨みつける。
それって、まだ茶色になってないからってこと?
獄寺って本当面白いのな。


「こいつどうしてやろうか。食っちまうか」
「あーなんか食えるらしいよな、どんぐりって」
「マジかよ!?」


バッと顔を上げてオレの顔を凝視する。その目は驚愕で見開かれていた。
どうやら思い付きで言ったらしい。
オレもしゃがみ込んで獄寺と向かい合う。視線の高さが並んだ。


「食えんのか?どうやって?」
「うーんと…………煎ったり?」
「煎る……」
「煮たり?」
「煮る……」


獄寺が小さく呟いてオレの言葉を反復する。
この様子じゃあ結構本気みたいだ。
そのうち、食ってみようぜとか言い出すかも。


「あとは?他にはなんかねぇの?」
「……バター使うとか」
「風味を出すのか!」
「ん、まあ」


ごめん適当。


「他には?」
「んー……」


瞳を輝かせて矢継ぎ早に聞き出そうとする。
ワクワクな笑顔は可愛いんだけど、このままじゃマズイよな。
オレが言った 「どんぐりは食べられる」 ってのは本当の話。
ただし食べ方の信憑性までは保証出来ない。チラッとどっかで聞いたことはあるけど、あんま記憶に残ってねぇんだ。
獄寺ってひねくれ者だけど、根は純粋だから簡単に信じちまう。オレの言ったことだから余計に……ってのは自意識過剰?
間違った知識を植え付けちゃあ後で怒られるよなぁ。


「なあ山本」
「うん?」
「お前は食ったことあんのか?」
「いや、一度も」


そう答えると、獄寺は暫し黙考してから口を開いた。


「よし。ここいらに落ちてるどんぐり、片っ端から拾え」
「どうすんだ?」
「決まってんだろ。お前が食うんだよ」


え、獄寺は?


「山本」


獄寺がポンッとオレの肩を叩く。


「オレに変なもん食わせたくねぇだろ?まずはお前が毒味な」


すっげえ笑顔で言い放ちやがった。


「えー獄寺は食わねーのかよ」
「お前がぶっ倒れなかったらな」


オレには変なもの食わせてもいいってか。


「誰が調理、つーのか?すんの?」
「オレ」
「……マジ?」
「他に誰がいんだよ」
「いないけど……」


ヤバイ。オレぶっ倒れるの決定だ。
だって獄寺、破滅的に料理苦手なんだもん。
今回の食材はどんぐりだけど、また凄いものが出されるのだろう。
……というか、この時季のどんぐりってまだ緑色なんだけど。これって食えんの?無理じゃね?


「美味く出来たら10代目にも差し上げようぜ!」


おいおい、とんでもないこと言うなよ。
もし不味いなんて言ったら、獄寺の機嫌を損ねかねない。
逆に美味いと言ってしまえば、大半のものはツナの元へ。


「ほら山本!さっさと拾え!」


とりあえず、



ツナ、ごめん。


up 08.10.05